これでわかる!TARCの全体像と、論文の背景について(最初の2行)、T細胞とB細胞の分化と役割について

タイトルの通り、前回紹介した論文背景の紹介です。

前回はAbstractでざっと全体像を書きましたが、多分何を言われているのかわからないと思います。

そこで、わかりやすくまずはイントロダクションから訳していきたいと思います。

と行きたいところですが、いきなりTARCの更に細部から説明しても知識の森のなかで迷ってしまいます。

 

そこで、TARCと痒みまでの全体像を説明します。

以下の図は論文からの引用になります:

Kataoka, Y. (2014). Thymus and activation-regulated chemokine as a clinical biomarker in atopic dermatitis. The Journal of Dermatology, 41(3), 221–9. doi:10.1111/1346-8138.12440

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 引用:Fig.8より

この図に書いてあること全てがわかる必要はありません。

大まかな流れさえ知っておけば良いのです。

アレルゲンや黄色ブドウ球菌が細胞表面にやってくる→

表皮中のDendritic Cell(DC)/Langelhance Cell(LC)(いわゆる外敵センサー、抗原提示細胞)が受信する→

センサーによってTARC(ケモカインの一種で、シグナルの一種)を生成する→

TARCによってTh2(T-helper2)がシグナル(IL-4,IL-5)を生産→

B細胞によるIgEの生産増加、好酸球の浸潤やその他炎症に関わる細胞が活性化する→

 マストセルからヒスタミンが出る→

ヒスタミンC-fiber(神経)に結合して大脳へ痒みを伝える

という流れです。

 

難しいですか?

要するに、抗原がくっつく→センサーが受信→TARCが情報伝達→痒みを感じるというわけです。

なお、IgE以降の詳細は以前書いていますので気になる方はご参照ください。

 

atopic-dermat.hatenablog.jp

 

では、次に前回紹介しようとしていた論文の背景についてです。

 

atopic-dermat.hatenablog.jp

 

 

背景について

炎症性の細胞が組織に浸潤するは、ケモカイン(Chemokines)の制御によって調節されている。ケモカインは小さな分泌ペプチドであり、組織に特異的なリンパ球の導入と移動を制御している。その際にGプロテインと共役する7回膜貫通受容体を通してシグナルを送る。

まだ出だし2行目の時点で意味がよくわからない人も出てくると思いますので、説明します。

例によって、解説に使うのはThe Cellです。ヴォート基礎生化学にはさすがに出ていませんでした。

  

 

ケモカインの前に概要を見てみよう

ケモカインの直接の説明にいく前に、ケモカインに関わる経路の大きな概要について見て行きましょう。

 

  1. 骨髄で血液製造
  2. 共通リンパ系前駆細胞
  3. 抹消リンパ器官でT細胞とB細胞に分化
  4. T細胞は3種類(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、調節性サプレッサーT細胞)に分化
  5. ヘルパーT細胞がサイトカインケモカインはこれの一種)分泌
  6. サイトカインがマクロファージ、樹状細胞、B細胞、細胞傷害性T細胞の活性化
  7. B細胞からIgEの生産、IgEが肥満細胞や好塩基球、好酸球に結合
  8. くしゃみや痒み、下痢を引き起こす局所的仲介物質を放出
  9. 体の上皮表面から細胞外微生物や寄生虫を追い出すのを助ける

 

1~3の骨髄からT細胞とB細胞分化について

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引用元:The Cell, NEWTONPRESS, P.1543, Fig.25-6

様々な分化能を持つ造血幹細胞(hemopoietic stem cell)から共通リンパ系前駆細胞(common lymphoid progenitor cell)ができます。

共通リンパ系前駆細胞が血液を通って造血組織から胸腺に移動し、そこでT 細胞
に分化します。

胸腺Thymusと英語で言うので、そこで作られた細胞をT細胞といいます。非常に明快ですね。

一方B細胞は、造血組織内で共通リンパ系前駆細胞から分化します。骨髄の中で起こっているので、骨髄Bone marrowということからB細胞という名前がつきました。

図を見てもらえれば一発でわかると思います。

T細胞とB細胞の役割

以前にも少しだけ触れていますが、T細胞、B細胞は白血球の中のリンパ球の一種です。ここで一般的な大まかな概要を掴んでおきましょう。

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引用元:The Cell, NEWTONPRESS, P.1540, Fig.25-2

TおよびBが2種類の応答を行っている図です。

ウイルス感染に応答しているリンパ球を示しています。

一方の抗体応答では,B 細胞がウイルスを中和する抗体を分泌します。

もう一方のT 細胞性応答では、T 細胞がウイルス感染細胞を殺します。

双方とも、図では省略した経路によって自然免疫応答が適応免疫応答の活性化を助ける仕組みがあります。

 

さて、ちょっと長くなってしまったので、4から先はまた別の記事にします。

ではでは。