これでわかるシリーズ!TARCによって活性化するヘルパーT細胞(TH2)。全く正常の反応でも度を越すと悪影響になる!?
勝手にシリーズ化してしまいましたが、今日は6のヘルパーT細胞がTARC(サイトカインのに属する)を分泌するところまでです。
例によって、The cellを参照しています。
非常にわかりやすく、とにかく図がほぼすべての説明に付属しているためイメージしやすく大変勉強が進みやすいです。
おすすめです。
さて、毎度ですが全体像を書いておきます。これまではで1-4は紹介しました。
今回は以下のリストでいうと5です。
- 骨髄で血液製造
- 共通リンパ系前駆細胞
- 抹消リンパ器官でT細胞とB細胞に分化
- T細胞は3種類(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、調節性サプレッサーT細胞)に分化
- ヘルパーT細胞がサイトカイン(ケモカインはこれの一種)分泌
- サイトカインがマクロファージ、樹状細胞、B細胞、細胞傷害性T細胞の活性化
- B細胞からIgEの生産、IgEが肥満細胞や好塩基球、好酸球に結合
- くしゃみや痒み、下痢を引き起こす局所的仲介物質を放出
- 体の上皮表面から細胞外微生物や寄生虫を追い出すのを助ける
前回はヘルパーT細胞は3種類に分化するところまで説明しました。
その中でヘルパーT細胞がTARCと関わりがあるので、それを取り上げていきます。
ヘルパーT細胞はTH1とTH2に更に分かれます。
では何が違うのかというと、TH1とTH2では分泌するサイトカインが違います。
あ、サイトカインというのはシグナルで、青信号や赤信号と同じでそれを出すとある酵素が活性化したり抑制したりします。
TH1は主に細胞内の微生物から体を守り、TH2は微生物や他細胞の寄生虫などおもに細胞外の病原体から体を守ります。
TARCもサイトカインの一種で、TH2に結合してTH2の機能を活性化します。
図にするとこんな感じになります。
The Cell, Newtonpress, P1593, FIG.25-68
ちょっと細かいので拡大してみてください。
TH1とTH2とありますが、TARCが作用するのはTH2です。
ちなみに、TH1は細胞内の病原体に対抗するのがメインと書きましたが、実際には細胞外の微生物を覆わせたり補体を活性化してその排除を手伝うことがあります。
これに対してTH2細胞(TH2 Cell)は、微生物や多細胞の寄生虫などおもに細胞外の病原体から体を守ります。
- TARCや抗原提示細胞がTH2細胞に結合する
- TH2細胞は、インターロイキン4と10(IL4 とIL10)など多様なサイトカインを分泌
- B 細胞を刺激してIgM,IgA,IgE,特定サブクラスのIgG などほとんどのクラスの抗体を作らせる
- こうした抗体の一部は肥満細胞や好塩基球や好酸球に結合
- これらの細胞は、抗原が結合して活性化すると、くしゃみやせきや下痢を引き起こす局所的仲介物質を放出してする
- 体の上皮表面から細胞外微生物や寄生虫を追い出すのを助ける
ということです。
体としては、全く正常のことやってるつもりなんです。
でも、何かをきっかけにこれがTH2細胞の活性が高くなって、攻撃しなくても良いものまで攻撃をしてしまっているようです。
じゃあ、全てのTH2細胞の活性を抑えたらどう?と考えた人がいれば科学的な見方ができる人かと思います。
ところがこれをやるとどうなるかというと、
最初のところの、
-
TH2細胞は、インターロイキン4と10(IL4 とIL10)など多様なサイトカインを分泌
これができなくなります。
これは免疫系の応答をなくすことになるので大変なことになります。
病気に対して全くの無力になる可能性があります。
安心して欲しいのは、痒みを止める薬はTH2細胞の活性を止めているわけではないのです。
むしろTH2細胞を抑制したら、免疫系が大変なことになりますしそんな薬は承認されるはずがありません。
抗ヒスタミン剤のターゲットはそこでなく、肥満細胞であるマスト細胞のところの段階をターゲットにしています。
最後から2番めの、
-
これらの細胞は、抗原が結合して活性化すると、くしゃみやせきや下痢を引き起こす局所的仲介物質を放出してする
これを止めるんです。
だから、痒みやくしゃみがでなくなるのです。
その根本を止めるのは無謀すぎますよね。
でも、発想としては間違っていませんよ。
もしTH1細胞のことが知りたくなったら、本を実際買って勉強してくださいね。
今日はこんなところにしておきます。
ではでは。