これでわかる!T細胞分化!

論文紹介といいながら、ほとんど背景知識の説明で終わってしまいました。

その分わかりやすくなるように配慮しています。

今回も背景知識で終わってしまうと思いますが、ご容赦ください。

前回は1.骨髄で血液製造から3.の抹消リンパ器官でT細胞とB細胞に分化する、まで書きました。

 

ケモカインが分泌されるまでのゆりかごから墓場にいく途中まで

ケモカインの直接の説明にいく前に、ケモカインに関わる経路の大きな概要について見て行きましょう。

  1. 骨髄で血液製造
  2. 共通リンパ系前駆細胞
  3. 抹消リンパ器官でT細胞とB細胞に分化
  4. T細胞は3種類(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、調節性サプレッサーT細胞)に分化
  5. ヘルパーT細胞がサイトカインケモカインはこれの一種)分泌
  6. サイトカインがマクロファージ、樹状細胞、B細胞、細胞傷害性T細胞の活性化
  7. B細胞からIgEの生産、IgEが肥満細胞や好塩基球、好酸球に結合
  8. くしゃみや痒み、下痢を引き起こす局所的仲介物質を放出
  9. 体の上皮表面から細胞外微生物や寄生虫を追い出すのを助ける

4.T細胞は3種類(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、調節性サプレッサーT細胞)に分化 

主要なT 細胞には、タイトル通り3種類あります:

細胞傷害性T 細胞ヘルパーT 細胞調節性(サプレッサー)T細胞です。

エフェクター細胞傷害性T 細胞は、ウイルスやほかの細胞内病原体に感染した細胞を直接殺す役割があります。

エフェクターヘルパーT 細胞は,ほかの細胞(おもにマクロファージ、樹状細胞、B 細胞、細胞傷害性T 細胞)の応答を促進させます。

調節性(サプレッサー)T細胞は、ほかの細胞、特に自己反応性エフェクターT 細胞の活性を抑制します。

 

4.1細胞傷害性T細胞

 細胞傷害性T細胞(cytotoxic T cell)は、宿主細胞の細胞質で抗体による攻撃を避けて増殖するウイルスやある種の細菌、寄生虫などの細胞内病原体から脊椎動物を防御しています。
細胞傷害性T細胞は、微生物が増殖して感染細胞から脱出し、近くの細胞に感染する前
に感染細胞を殺して防御を果たします。

ここで実際に電子顕微鏡写真を見てみたらイメージがしやすいです。

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 引用元:The Cell, NEWTONPRESS, P.1572, Fig.25-46

(A)が標的に結合しているエフェクター細胞傷害性T細胞の電子顕微鏡写真。

(B)は細胞傷害性T細胞と破壊した腫瘍細胞の電子顕微鏡写真。見事に細胞膜が破れて死んでいます。

(C)抗チューブリン抗体染色したT細胞と腫瘍細胞の免疫蛍光顕微鏡写真。T細胞中心体が標的である腫瘍細胞の膜表面にがっつり結合しています。ここから腫瘍細胞に分泌物を送り込むようです。

細胞傷害性T細胞は直接敵を殴りこみにかかる、鉄砲玉にようなものです。

心強いですね。

4.2ヘルパーT細胞 

ヘルパーT 細胞(helper T cell)は細胞内外の病原体に対する防御に欠かせない存在です。

ヘルパーT 細胞は、B 細胞の抗原刺激を助けて細胞外の病原体とその毒性産物の不活性化や排除を助ける抗体を作らせたり、マクロファージを活性化して食胞内で増殖する細胞内病原体を破壊させたり、細胞傷害性T 細胞の活性化を助け感染した標的細胞を破壊させたり、樹状細胞を刺激して活性化状態を維持させたりします。

役割としては多岐に渡りますが、以下図を見てもらえるとその動きがイメージしやすくなります。

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 引用元:The Cell, NEWTONPRESS, P.1574, Fig.25-48

まだ誰とも接触していない未感作ヘルパーT細胞は、抹消リンパ器官で分化してTH1またはTH2エフェクターヘルパーT細胞になります。

ということで、ヘルパーT細胞は細胞傷害性と違って、その他の細胞の動きを活発化させるいわゆる弾薬を持ち運ぶ係のようなものでしょうか。

プライベート・ライアンでは、「アパーム!弾を持ってこい!」という感じでしょうか。

4.3 調節性T細胞

そもそも調節性T細胞(regulatory T cell)自体が同定されたのがごく最近です。というのは、同定に適した細胞標識が最近までなかったからです。

最初は他のリンパ球の活性を抑制する能力から同定されたので、サプレッサーT細胞と呼ばれていました。

ところが、細胞標識が利用可能になったので、このT細胞は名前が調節性T細胞と改名されました。

エフェクターヘルパーT細胞や細胞傷害性T細胞、樹状細胞の活性を抑制することがわかりました。

調節性T細胞は、血液や抹消リンパ器官にあるT細胞の10%にも満たないですが、事故反応性エフェクターヘルパーT細胞や細胞傷害性T細胞の活性を抑制して免疫自己寛容に重要な役割を果たしています。

以上からまとめると、この調節性T細胞がないと我々は内部に持つ警備機構に殺されることになります。

めちゃくちゃ重要ですね。

5.ヘルパーT細胞がサイトカイン分泌

ということで書きたいのですが、このコラムだけで相当長くなってしまいそうなので分割することにしました。

とりあえず今日覚えて帰って欲しいのは、T細胞が3種類に分かれて、ヘルパーT細胞はTH1とTH2に分かれてそれぞれ仕事をするということです。

ではでは。