TARCとCTAKレベルとアレルギー疾患の関係についての論文続き その1 ケモカインについて

書こう書こうと思っていて、ずいぶん経ってしまった・・・

 以下、TARCについての論文で、過去記事の続きです。

論文のイントロダクションの中でも、特にTARCとそれを受容する受容体、そしてその受容体を持つT細胞について画像付きでわかりやすく解説します。

atopic-dermat.hatenablog.jp

 これのバックグラウンド知識について解説がありますので、そちらも御覧ください。

 

atopic-dermat.hatenablog.jp

 

 

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まずは、イントロダクションのところからです。

引用元の論文は、次の通りです:

Hijnen, D., De Bruin-Weller, M., Oosting, B., Lebre, C., De Jong, E., Bruijnzeel-Koomen, C., & Knol, E. (2004). Serum thymus and activation-regulated chemokine (TARC) and cutaneous T cell- attracting chemokine (CTACK) levels in allergic diseases: TARC and CTACK are disease-specific markers for atopic dermatitis. The Journal of Allergy and Clinical Immunology, 113(2), 334–40. doi:10.1016/j.jaci.2003.12.007

イントロダクション

炎症性の細胞が組織に浸潤するは、ケモカイン(Chemokines)の制御によって調節されている。ケモカインは小さな分泌ペプチドであり、組織に特異的なリンパ球の導入と移動を制御している。その際にGプロテインと共役する7回膜貫通受容体を通してシグナルを送る。

 

ケモカインについては過去に説明しましたので、そちらをご覧いただくとして、Gプロテインについて軽く説明します。

図を見てください。

Gプロテインというのは膜を7回貫通しているタンパク質です。

G Protein Coupled-Receptor(GPCR)といいます。

このGPCRに神経伝達物質やホルモンが結合すると、それにともなって構造を変えて、細胞内部にシグナルを伝達するタンパク質です。

ここにケモカインが結合するというわけです。

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画像引用元:

Li, J., Ning, Y., Hedley, W., Saunders, B., Chen, Y., Tindill, N., … Subramaniam, S. (2002). The Molecule Pages database. Nature, 420(6916), 716–7. doi:10.1038/nature01307

Tセル誘導する皮膚特有の重要なケモカインは 胸腺および活性化制御ケモカイン(TARC)と皮下T細胞誘導性ケモカイン(CTACK)の2つを含んでいる。TARCの受容体はCCR4であり、皮膚誘導(Skin Homing)の、皮膚リンパ球抗原ポジティブT細胞(CLA+)で発現している。

言葉で言われても、やはりイメージしずらいですよね。

そこで、イメージで直感的に捉えるとわかりやすいものです。

この文ではTARCとCTACKがケモカインの一種で、T細胞のCCR4(C-Chemokine Receptor 4)に結合するという話が書いてあります。

CCR4は、上で書いたとおり、膜を7回貫通しているGPCRの一種で、細胞内部にシグナルを出します。

 

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 画像引用元:

Peter J. Barnes, New drugs for asthma, Nature Reviews Drug Discovery 3, 831-844 (October 2004) | doi:10.1038/nrd1524

上の画像では、喘息に関係する受容体のCCR2, CCR3と CCR4についての説明を図式化したものです。

ここに載っている細胞たちは基本的に炎症反応を起こすと言われていて、それが鼻で起これば鼻炎、気管支で起これば喘息、皮膚で起こればアトピーとなります。

だから、喘息持ちの人はアトピーになりやすいのは発現している場所が違うだけだからです。

ちなみに、僕は重症の喘息持ちでした。

 

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CCR4というのは一番右側で、TARCがCCR4と結合して、シグナルを細胞内部に出して、未分化のT細胞がT Helper2細胞に変化するということみたいです。

CLA+についてですが、これも画像がありますのでイメージで捉えましょう。

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画像引用元:

Thomas S. Kupper & Robert C. Fuhlbrigge, Immune surveillance in the skin: mechanisms and clinical consequences, Nature Reviews Immunology 4, 211-222 (March 2004) | doi:10.1038/nri1310

抗原がやってくる→表皮で抗原提示細胞のランゲルハンス細胞が受け取る→ケモカイン(TARC,CTACKを含む)を分泌→CLA+ T細胞を誘導

という流れです。

Skin homing T-cellについて

紫外線が当たった時の皮膚内部の反応の画像を見つけました。

Skin homing T-cellはいわゆるT helper2細胞で、その受容体にCLA+とCCR4+を持っています。

Naive T-cellからskin homing T-cell(TH2 Cell)に変わります。

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画像引用元:

Environmental cues, dendritic cells and the programming of tissue-selective lymphocyte trafficking, Hekla Sigmundsdottir & Eugene C Butcher
Nature Immunology 9, 981 - 987 (2008) Published online: 19 August 2008
doi:10.1038/ni.f.208 

 では、また続きです。

In vitroの研究においては、TARCによってTH2の表現系のリンパ球が選択的に移動させられていることがわかった。

皮膚や空気経路において、TH2表現系のエフェクター・記憶型CD4+ T細胞が浸潤することは、病気の原因、特にアトピー性皮膚炎(AD)、アレルギー性鼻炎(AR)、そしてアレルギー性喘息(AA)において重要な役割を持っている。カキヌマらによって、最近わかったことは、乾癬性の患者や健康な人の被験者(HCs)より血清TARCレベルが上昇していることであった。更に、血清TARCのレベルがADの重症度と相関していることも示されていた。

というわけで、以前カキヌマさんたちが行った実験によってTARCレベルとアトピー性皮膚炎患者の重症度と相関性があることが示されていました。

この研究はその追試を行う意味があると考えられます。

さて、長くなってきたのでまた続きは今度にしましょう。

ではでは。