アレルギー性疾患の胸腺および活性化制御ケモカイン(TARC)と皮下T細胞誘導性ケモカインのレベルについて:TARCとCTACKはアトピー性皮膚炎の疾患特異的マーカー
こんばんは、みなさん。
更新しようと思ってて仕事量が倍になってしまった私です。
まぁそんなことは置いておいて、タイトルだけ見ると難しそうな上記論文を紹介したいと思います。
なぜこの論文なのか?
なぜこれを紹介しようと思ったかというと、日本では2008年からTARCを保険で測定できるようになったからです。
最近ではこれを診断基準にしている医師もいるかもしれません。
東邦大学では測定できますが、TARC測定を積極的に推してくる医師はこれまでのところいませんでした。
やはり実践的には、ベテランの医師には目視で状態を把握するので充分なのかもしれません。
経験で血液検査でできるレベルのことを補っているのでしょう。
TARCを測定する意味はあるのか?
私としては、これを測定する利点が3つあると考えています。
- 現在のアトピーの悪化レベルを客観的に測定できること
- 血液検査なので記録に残せること(自分と医師にとっての治療の成果物)
- 薬の強度の選択基準になること(医師によって)
このメリットが、血液検査の検査額よりもたかければ実施してもいいと考えています。
特に2.は重要と思います。
というのも、何ヶ月も病院に通って、薬代と時間を犠牲にしているわけですから、ある程度の結果が伴わないと一体何をしていたのか、わからないからです。
もし、TARCレベルを指標として治療する医師がいれば積極的に測定するのもありでしょう。
東邦大学で血液検査を実施しましたが、領収書を確認してみると保険点数が760点でした。
通常、1点=10円ですので、7600円かかります。
3割負担で2280円です。
2000円ちょいでこれだけの情報がわかるなら、2-3ヶ月に1回程度なら実施しても良さそうな気がします。
1月あたり1000円もかからない計算ですし。
私は上述の通り、TARC測定を勧めてくる医師がほとんどいなかったので、自分で測定することを申請しています。
論文の紹介
さて、では論文についてです。
Hijnen, D., De Bruin-Weller, M., Oosting, B., Lebre, C., De Jong, E., Bruijnzeel-Koomen, C., & Knol, E. (2004). Serum thymus and activation-regulated chemokine (TARC) and cutaneous T cell- attracting chemokine (CTACK) levels in allergic diseases: TARC and CTACK are disease-specific markers for atopic dermatitis. The Journal of Allergy and Clinical Immunology, 113(2), 334–40. doi:10.1016/j.jaci.2003.12.007
これについて、紹介していきます。
この論文は2004年にパブリッシュされており、現時点でscopusによると124件の被引用数でした。
今日は、論文の短縮のAbstractだけ紹介します。
背景:
CD4+ T細胞の組織浸潤は特にアレルギー疾患の経路において重要な役割を担っている。T細胞のトラフィックは特定のケモカインとそのレセプター(受容体)によって調節を受ける。
目的:
この研究の目的は、胸腺および活性化制御ケモカイン(TARC)と皮下T細胞誘導性ケモカイン(CTACK)がアレルギー疾患を持つ多数の母集団における患者でどのように関与しているのか調査することである。
方法:
血清TARCおよびCTAKレベルが455人のアレルギー疾患を持つ患者で測定された。患者は以下のように分類された:アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis, AD)アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、あるいはその複合、そしてコントロールして健康的な患者である。血清TARCおよびCTACKレベルはアトピー性皮膚炎を患う患者では相関が見られた。更に付け加えると、アトピー性皮膚炎患者7人においては、シクロスポリンA治療を開始した後に血清TARCとCTACKのレベルの調査も行った。最後に、TARCとCTACの発現性はアトピー性皮膚炎患者の皮膚切片切除後、免疫染色法によって確認された。
結果:
アトピー性皮膚炎患者におけるTARCとCTACKの血清レベル両方ともに、健康なコントロール区の患者とアレルギー呼吸器疾患患者とくらべて著しく高かった。更に、血清TARCとCTACKレベルはアトピー性皮膚炎患者の病態と明らかに相関が見られた。免疫反応性TARCが表皮細胞でなく、真皮の浸透性細胞および内皮細胞において発見された。
結論:
血清TARCレベルはアトピー性皮膚炎患者特有の病態の客観的な指標となる。更に、これは治療のモニタリングとしてそれを保証するツールでもあるだろう。
詳細については、後ほど。
理解すれば、なぜTARCを測定するのかわかるようになります。
そして、そのメリットデメリットがわかりますから、TARC検査をどう見たらよいのかわかるようになるはずです。
あなたの治療にもきっと役に立つと思います。
ではでは。